「鬼のみちゆき」
平安時代の女性は、男性を待つだけだから、つらいですね。
心変わりした男性がよそに行ってしまい、自分のところには、来ない。
歌を詠(よ)んで、誘っても、来ないときは来ない。
待っている内に、
自分でもどうしようもない感情ができあがりそう。
待ち続けて、亡くなってしまった女性のその後の話。
鬼となっても、愛していた念だけは残っているから、
どうにかして男性に会いにいこうとしてしまう。
途中で邪魔をするものは、殺してしまう。
自分で自分を止められない。
晴明が、相談を受けて、次に同じことが起きないような解決をします。
以下はネタバレの内容になります。
ネタバレが嫌な方は、この先を見ないでください。
~この巻の極意集~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
モノにも意思があること
この世は目に見えない幾重(いくえ)もの層が重なってできている
それぞれの属する層はきまっていて、普通の状態では交わらない
しかし、何らかの呪(しゅ)でもって
出入口が開いた時
もしくは交わった時
同じ層で異界に住むもの同士が
顔をあわせるのだ
悪霊に対するときに必要なことは、恐れでも敬(うやま)いでもなく、理解
七という数字の持つ力
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理解されること=癒やし(いやし)
は、そうだと思います。
自分の気がついていない部分を、
理解してもらえただけで、
ほぐれていく時はありますから。
「天邪鬼(あまのじゃく)」
上賀茂神社の横を抜けていく山の中に、
怪しい童(わらわ)が立っています。
通せんぼをしています。
「ここを通りたいのか?通りたくないのか?」という
問答をふっかけてきます。
「通りたい。」と言ったとたん、童は、巨大化して、
踏みつけられてしまいます。
そのまま、朝をむかえて、
背中に、一本の小枝が乗っているだけだったということに、気がつきます。
この問題を持ち込まれて、晴明がどうやって解き明かすのか、
想像ができませんでした。
晴明と博雅は、二人で上賀茂の山中に向かいます。
「ここを通りたいのか?通りたくないのか?」という
童の問答に対して、
博雅は、「通りたい。」と答え、名前を名乗り、
童に術をかけられて、動けなくなります。
晴明は、
「通らせたいのか通らせたくないのか、おまえの言うとおりにしよう。」
と言い、
童を怒らせます。
そして、呪文で縛り、童の本来の姿に戻します。
それは、四天王のひとつである広目天の踏みしめている邪鬼でした。
彫刻されていた場所から逃げ出して、
元々の木の場所に戻っていたというオチです。
解決してしまえば、なんだかほほ笑ましい。
こんなユーモアにあふれたお話も好きです。
原作者である夢枕獏さんと、岡野玲子さんのお二人が、
同時に、漫画化を願った結果生まれた、
奇跡のような作品であることも、
一巻と二巻の巻末で明かされています。
こんなめぐり合わせがあるのだと、読者として感動しました。
(最終更新日2022年2月9日)