「蟇(ひき)」
応天門にあやかしが出た件について、調べている晴明。
博雅を誘って、原因を探りに行きます。
秘術を用いて、100年以上昔の平安京へと、さかのぼる旅をします。
読んでいる私たちも、思いがけずそれに巻き込まれていく感じがします。
ひとつ間違うと、自分たちの身が危なくなる危険なエリアを
通っているので、読んでいて、どきどきします。
100年前の隠態(いんたい)の世界で、
当時、起きたことを観察するために、
晴明と博雅は、自分たちの存在を消しています。
うっかりとコトバを発すると、亡くなっている人たちに見つかって、
捕まり、もとの世界に戻れなくなるという、設定です。
コワいですね。
以下はネタバレの内容になります。
ネタバレが嫌な方は、この先を見ないでください。
~この巻の極意集 その1~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
源博雅の奏(かな)でる音は、皆の行動も変える力がある
(源博雅の持つ)優しさや素朴さは鬼にとって恐ろしいもの
鬼との約束を守ることもだ
優しくされたり
約束を守られたら
相手を怨む(うらむ)ことができなくなるだろう
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これが、第三巻の問題、
「何故、佑姫(すけひめ)は、源博雅の顔を見たとたんに、逃げ出したのか?」
の答えになります。
情はゆらめき
ゆらめきは人の心を弱くする
そこに鬼はつけ込む
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「白比丘尼(しらびくに)」
「永遠の若さと美しさを得た娘は、幸せなのか?」
ということを思いました。
夫や息子、娘が普通に老いて、この世を去る中で、
自分一人がいつまでも若く生きている。
夢には見るけど、実際にそうなったら、つらいかもしれないです。
孤独だから。
少年のころの清明の記憶でも、若く美しい白比丘尼。
そのままの若さと美しさで、晴明と博雅の前に、現れます。
~この巻の極意集 その2 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
死なぬということは真の人
枯れぬということは完成された真の花なのだ
それが、完成された姿なのだ
(永遠の命を生きる)そなたに禍蛇(かだ)のたまるは
そなた自身の理由ぞ
もうわずかに耐えれば何者とてそなたに近づけなくなったはず
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いつくるかわからない「もうわずか」を耐えて、待ちながら、
孤独の中で、
人としての完成を目指すのは、なかなかつらそうです。
この白比丘尼のエピソードの回収は、
6巻、11巻、12巻、13巻でされていたと思います。
白比丘尼は、 永遠の女性というテーマを、
表していると思いました。
みなが、心の奥底で深く憧れていて、望んでいる存在です。
「私たちが忘れていて、見ないようにしてきた何か」
でもあります。
(最終更新日2022年2月13日)