「瓜仙人」
(うりせんにん)
特注の礼服を、第八巻の雨乞いに着ていき、ダメにしてしまった源博雅。
そのことで、お付きの人に文句を言われています。
神様にお願い事をするときには、最上の服をまとうべきなので、
博雅の行動は、実は礼儀にそっています。
現実面では、怒られていますけど。
新しい登場人物が出てきます。
方士の先生と紹介されていましたが、もっと他の姿もありそう。
- 博雅が、楽(がく)を奏でるために生まれた楽の申し子であること
- 雨乞いの時に、晴明が、玉置まで行かなかったこと
- 内裏が炎上するという予言があること
など、大切なことを言って、去っていきます。
こんな大事なことを教えてくれる人は、大好きです。
嘘のない本当のことを、話せる場所にいる人かどうかを、見分けるのが大変だけど。
ご本人も悪気なく、本当のことを話していると思っている、
でも、情報そのものが、あまり高いソースから出ているものでない、
ということは、あるあるだから。
受け取る側が、注意深く判断するしかないです。
「源博雅 思はぬ露見のこと」
(みなもとのひろまさ おもはぬところあらはしのこと)
博雅の人の良さ、上品さ、愛され具合が、よくわかる回です。
本人の知らないうちに、結婚が、終わっていたという。
それでいて、皆がそのことに満足しています。
「内裏 炎上ス」
(だいり えんじやうす)
内裏の怪異が、続きます。
皆が不安になってどうにかならないかを、相談しています。
炎上を止めるすべはないのかと、考えています。
「七月の雨乞いのときに、
天河まで行ったのに、玉置までは行かなかったことが、
内裏の炎上に関係あるのでは?」
ということに、気がついてしまった晴明は、一人苦悩します。
「やれるだけのことは、したはず。」と、思いながら。
結局、内裏の炎上の流れを、止めることはできず、
天徳四年九月二十三日に、出火してしまいます。
大混乱のなか、御所では、
逃げる公達、姫たち、宝物を盗もうとする盗賊が、
入り乱れます。
博雅は、楽にまつわる宝物を、
炎の中、命がけで運び出します。
~この巻の極意集~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
晴明から博雅へ
「おれに・・・ 頼るな・・・
おれに頼ればおぬしは鈍(にぶ)る
判断が鈍れば行動に遅れる」
完全に守られるのは、この男(博雅)の本性が全開した時だ・・・
おれを経由させれば遅れる
僭越(せんえつ)すぎて、言えぬ
(内裏の炎上によって)
火の山 愛護(あたご)が開いた
東北・・・ 鬼門の比叡(ひえい)と
西北・・・ 冥界に通じている愛護(あたご)
(内裏の)南庭(なんてい)に集められていた
怨念(おんねん) 亡霊たちが
開いた愛護(あたご)に
吸収されていく・・・
内裏の炎上は通過儀礼(イニシエーション)というわけか
それに・・・
もともと・・・
北野の社(やしろ)に
管公以前に、祭られていたのは、
火雷神(ほのいかづち)では
ないか・・・
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愛宕山
晴明は、最終的には、
内裏炎上は通らねばならない道であったと判断します。
同時に、晴明自身の体の中の導管(どうかん)が、開きます。
みずからの体を通して、天と地をつなげる器を作るための、
晴明にとっての通過儀礼。
怖くて、嫌な事を、経験して、
その先にある光景を見つけます。
それは、晴明自身のイニシエーションです。
(最終更新日2022年3月15日)